昨年、ネットの編み物界隈をウロウロしていたときに、『ニッターズハイ』という言葉を目にしました。ニッターズハイって、ランナーズハイみたいな編み物版か？と思い、そのときはとくに気にも留めなかったのですが、先日の日曜日にもまた見かけたので、気になって調べてみました。すると、編み物をする男子高校生が主役のマンガであることを知りました。

　ヨーロッパでは、編み物をしている男性ってわりといると思います。ノルウェーのArne and Carlosは超有名どころですよね。私の友人の子ども（フィンランド人）は学校で編み物を習ったそうですし、スコットランドのエディンバラへ行ったときに毛糸を買っている男性を見かけましたし、イギリスの有名な編み物デザイナーのStephen Westさんもいらっしゃいますし、インスタグラムでは何人もの男性ニッターを見ました。ここ最近だとイギリスのオリンピック選手が待ち時間に編み物をしているのが日本で話題になっていましたよね。
　でも、日本では、雑誌やウェブのブログなどで編み物をしている男性を見たことはありますが、有名な広瀬光治さん以外は実際に編んでいる男性を見たことがありません。

　『ニッターズハイ　1』（角川書店、2021）は、全国大会を目指す優秀な陸上選手だった主人公が怪我で陸上を諦めていたときに、入学した高校で「編み物王子」に出会い編み物を始める、友情物語です。2022年2月の段階では第一巻のみが刊行されていて、最初は「男が編み物をするなんて変だし」と言っていた主人公が編み物をするようになり、編み物にもランナーズハイに似た感覚があることを身を持って知り、編み物にハマっていく様子が描かれています。また、編み物王子の編み物への葛藤も読みどころです。手芸部の先輩方もキャラが立っていておもしろい。編み物が物語りにガッツリ取り込まれていて、読んでいてとても楽しかったです。男子校なので、主人公たちがみんな男の子というのが良い。続きが楽しみ。

　ちなみに、主人公の名前は浜仲健斗（ハマナカ・ケント）、編み物王子の名前は黒葉類（クロバ・ルイ）……どこかで見たことがあるような名字ですね。芸が細かい。