ゲッティンゲンの水 〜今まで住んだ地域と比べて


 ブログに何度か書きましたが、ケンブリッジで住んでいた部屋を退去するにあたり、水まわりの掃除が一番大変で、とても気を遣いました。その理由は、ライムスケール(水あか)を除去するのに時間がかかったからです。どんなに気をつけていても、いつのまにか成長しているライムスケールには、日々悩まされていました。
 イギリスは多くの地域、とくに中央から東側は強い硬水です(リンク先でイングランドの硬水分布図を見ることができます)。ケンブリッジはまさに非常に強い硬水地域。以前、硬水でお茶を入れると膜ができるため、それを発生させないために?イギリスではミルクを先にカップへ注いでおき、そこへ紅茶を注ぎ足して飲む習慣があると聞いたことがありました。当初は意味がよくわからなかったのですが、住んでみて分かりました。ポット型浄水器で水道水を濾過しても、その効果が感じられるのは最初の一週間くらいで、その後はお茶を入れると表面に薄く膜が張るようになり、カートリッジの交換を促されるひと月後には、この膜でカップの内側がひどく汚れていることは日常でした(食洗機がその汚れをキレイにしてくれるので問題ありませんでしたが)。しかも、ティーバッグを入れっぱなしにしてしばらく放置しておくと、紅茶が真っ黒になるという現象もありました。それから、硬水だとうまく出汁が取れないのも問題でした。友人はわざわざ軟水をペットボトルで定期的に購入し、それで料理をしていたくらいです。

 ゲッティンゲンに住むようになって、ある日夫が『肌の調子が大分良くなったような気がする』と言ってきました。たしかに、ケンブリッジに住んでいたときの夫の肌は乾燥が激しくて、酷く荒れていました。そのため、それまでは使用することがなかった化粧水(私が日本から持ってきていたオードムーゲ)で保湿をするように言い、夫もそれに従っていました。私はオードムーゲでの保湿だけでは足りなくなり、イギリスで見つけたローズウォーター(Bootsのオリジナル商品)とニベアの青缶で保湿をしていました。しかし、いまはローズウォーターだけで充分保湿ができています。
 またある日、お茶を淹れていて気づいたのですが、ポット型浄水器を使い始めて二週間以上が経ってもカップの内側が膜で汚れないのです。ティーバッグを入れたまま放置してても、イギリスで見たような真っ黒紅茶にはなっていません。そういえば、キッチンやバスルームといった水まわりも見てもそういえばライムスケールがあんまり出ていません。ということは、水の硬度が違うのかもしれないと思い、これまで住んだ場所の水の硬度を比較してみました。結果、イギリスのケンブリッジが一番硬度が高く、ゲッティンゲンは硬度が一番低いことが分かりました。
 
 
 住んだことのある地域の詳細な水の硬度について触れる前に、硬水や軟水をどういう基準で決めているかについて書いてみようと思います。
 ドイツで医師をしているDr.馬場さんが、ドイツと日本の水をデータで比較し、軟水・硬水の特徴などをまとめた記事『日本との水の違い – ドイツの硬水』(ドイツニュースダイジェスト内)が見つかりました。ドイツの硬水のことや人体への影響などについて分かりやすく簡潔に書かれているので、興味のある方は一読されることをオススメします。

 まず水の硬度とは何を意味しているのか、先述の記事から引用します。

水に含まれるミネラルが多いものを「硬水(hartes Wasser)」、少ないものを「軟水(weiches Wasser)」と区別します。水の硬度は、カルシウムとマグネシウムの量によって定義され、日本の生活用水の8割が軟水であるのに対し、ドイツを含む欧州地域では、ほとんどの水道水が硬水です。 
引用元:『日本との水の違い – ドイツの硬水』ドクターの診察室(Dr. 馬場著、ドイツニュースダイジェスト、15 März 2013 Nr.950)

 そして水の硬度の定義は、次のように書かれています。

水の硬度(Wasserhärte)の表記単位と定義は国によって様々です。ドイツでは、水に含まれるカルシウムとマグネシウムを酸化カルシウムの重量に換算した°dH(Grad deutscher Härte)という単位で表記され、14°dH以上を硬水と定義しています。これはWHOの単位に換算すると約250mg/Lの「超硬水」に当たります。日本はWHOと同様の単位と分類を用い、120mg/L 以上を硬水としています。 
引用元:『日本との水の違い – ドイツの硬水』ドクターの診察室(Dr. 馬場著、ドイツニュースダイジェスト、15 März 2013 Nr.950)

 ドイツでは、水の硬度の基準を、8.4°dH以下は軟水、8.4〜14°dHを中硬水、14°dH以上を硬水と定めています。

 ちなみに、イギリスでの硬度の表記単位は、1リットルに含まれる炭酸カルシウム(CaCO3)の量を表したmg/l(miligrams per litre)です。これはWHOが発表している飲料水の硬度についての資料(Hardness in Drinking-water)で用いられている単位と同じです。この資料によると、炭酸カルシウム含有量が60mg/l以下は軟水(soft)、60〜120mg/lは中硬水(moderately hard)、120〜180mg/lは硬水(hard)、180mg/l以上は超硬水(very hard)という基準が示されています。

 ドイツは独自の単位を用いていますが、Dr.馬場さんの記事内で触れているように、ドイツの°dHの値に17.8をかけた換算数値が、WHO基準の数値と比較できるようです。そのため、ドイツの地域は°dHとWHO基準に換算した数値を併記します。
 では、これまで住んだ地域の水の硬度について、地域別に書き出してみます。
 

Jülich ユーリッヒ(ドイツ、ノルトライン・ヴェストファーレン州)

Stadtwerk Jülichが発表している飲料水にかんする資料によると、ユーリッヒの水は11°dH、ドイツ基準では中硬水です。WHO基準に換算すると195.8なので、超硬水に分類されます。
 

Mainz-Kastel マインツ・カステル(ドイツ、ヘッセン州)

マインツ周辺は、水を供給している水道が複数あり、それによって水の硬度が違います。Mainzer Netze GmbHが発表している飲料水にかんする資料またはウェブページによると、マインツ・カステルはPetersaue ペータースアウエという、ライン川の中州にある水道から供給されており、ここの水の硬度は13〜15°dH、ドイツ基準では中硬水です。WHO基準に換算すると231.4〜267なので、超硬水に分類されます。
 

Cambridge ケンブリッジ(イギリス、ケンブリッジ州)

Cambridge Water companyによると、私が住んでいた場所はCambridge City North区域に分類されるようです。ここの水は304.5mg/l。泣く子も黙る?超硬水です。
 

Göttingen ゲッティンゲン(ドイツ、ニーダーザクセン州)

Stadtwerk Göttingen AGが発表している飲料水にかんする資料によると、ゲッティンゲンの水の硬度は6.4〜6.8°dH、ドイツ基準では軟水です。WHO基準に換算すると113.92〜121.04なので、中硬水〜硬水に分類されます。
 
 
 こうやって見てみると、今まで住んだ場所のなかでは、やはりゲッティンゲンが一番水が軟らかいことが分かります。ユーリッヒもカステルも世界基準で見ると超硬水地域。しかし、それ以上であるケンブリッジの数値がえげつない(笑)。ケンブリッジで夫や私の肌が荒れたのも当然です。そんな超硬水地域から、中硬水地域のゲッティンゲンに移れば、肌の調子も良くなり、お茶に皮膜もできないわけですね。
 でも、イギリスよりも頻度が少なくなったとはいえ、水まわりの掃除をサボれないのが悲しいところ……。
 
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