どちらの指にかけて編むか 〜フランス式とアメリカ式


 棒針を使って編む場合、針に糸をかける方法がいくつかあります。大きくは二つに分けられるでしょう。左手に糸をかけるフランス式と、右手に糸をかけるアメリカ式です。英語ではフランス式をContinental Style(コンチネンタル・スタイル)、アメリカ式をEnglish Style(イングリッシュ・スタイル)と呼びます。変わり種では、糸を首に掛けて編むポルトガル式もあるようですが、残念ながら詳しくありません。

 日本では一般的にフランス式で解説されることが多いように思います。例えば、ハマナカ株式会社が提供している編み方解説動画はフランス式ですし、他にも日本人の方がアップロードされている動画はフランス式が多いな、という印象です。私も、子どものころはフランス式でした。手ほどきをしてくれた母がフランス式だったからです。しかし、フランス式ではどうしても解消できなかった問題にぶつかり、それを解消するために編み物の先生をしていた叔母からアメリカ式を勧められ、いまではアメリカ式で編んでいます。

フランス式で編むときに困っていたこと

 フランス式で編んでいたとき、裏編みでは、針に糸を掛けるのに、伸張している糸を親指で上から押さえて針に掛けて編む(参照「たた&たた夫の編物入門」より『基礎技法徹底図解 裏編み(フランス式)』 2.裏編みの現状 − 色々な裏編み方法より 図(2)親指を使う)という癖のあるやり方をやっていました。これのせいで、私の編むスピードは決して速いとは言えませんでしたが、それまで速さを気にしたことはなく、当時は現状に満足していて、編む速度をあげようだなんて考えたこともありませんでした。しかし、フランス式で一点だけ、どうしても気に食わないことがありました。それは一目ゴム編みがよろけたような不揃いな目になることでした。いま思えば、表編みと裏編みで左手に掛けている糸のテンションが違い過ぎて不安定だったからだと分かるのですが、当時は自分自身では解決できない大きな問題でした。裏編みのやり方を直そうと、当時の自分なりにいろんなことを試してみましたが、どうしてもコツが上手く掴めず、結局矯正するには至りませんでした。

アメリカ式に変えてみた

 ずいぶんあとになって、先述したように、編み物の先生をしている叔母にゴム編みの目が不揃いになってしまうことを相談したら、アメリカ式に変えてみることを勧められました。叔母がアメリカ式で編んでいたのです。教えられながら試しにやったところ、目の揃ったきれいな編み目(あくまでも自分比)になったことにびっくり。これがアメリカ式へ転換するきっかけでもありました。ただしこのときは、糸を人差し指に掛けて編むフリッキングを使うのではなく、右手で糸を持って針にかける編み方でした。これでも何も問題はなかったのですが、夫からの一言が編む速度を気にする機会となりました。

アメリカ式でスピードアップ

 実は夫の母、私にとっての義母も、編み物講師の資格を持っています。夫は自分の母親が編み物をしているのを子どものころから見ていたので、あるとき、私が編むスピードを見て「全然速くない」と言ったのです。自分比では少しは速く編めるようになったと思っていただけに、この一言にはガッカリ。夫曰く、義母はそんなに手を大きく動かさないし、手元で両手を小さくモニョモニョと動かしてると気づいたら編み上がってた……なのだそうです。義母が編んでいるのを見たことがないので、夫の話からの考えるに、義母もアメリカ式でしょう。これを聞いて、私も叔母や義母のようにもっと速く編めるようになりたい!とやる気が出ました。

 まずは何をすればいいのかをネットで調べてみたら、アメリカ式にはフリッキング flicking(糸を右手人差し指にかけて編むやり方)という言葉があることが分かりました。この言葉を知ったあとは、芋づる式にフリッキングについてのいろんな情報を探し当てることができるように。その後、そのやり方が解説されている動画を見つけ、それを見ながら練習を始めました。フランス式のときのような変な癖がつかないように気をつけ、何かを編んでいるときは常にフリッキングの練習も兼ねて、ひたすらメリヤス編みを続けました。ひと月以上は続けたと思います。ある日、フリッキングがちゃんと機能しており、それに伴い、以前に比べて編むスピードがかなり速くなっていることに気づきました。編み始めてから完成までの時間がだいぶ短くなったのです。これには嬉しくなり、夫に編んでいるところを見せてみたら「本当に編むのが速くなった」と言ってくれました。

※追記
後日、アメリカ式でどのようにして速く編めるようになったのか、練習方法(あくまでも私個人がやってきたことで、それが一般的な方法かは分かりません)やフリッキングに慣れるために参考にした動画などを紹介する記事を書いています。


 

フランス式とアメリカ式の使い分け

 実は、フランス式も、その後ついでに動画を見て練習をし、裏編みのさい、親指を使う癖を克服しました。また、表編みのやり方もフォームを見直したため、以前よりだいぶ速くなりました。なぜフランス式を再び練習したのかというと、フランス式の方が編み地がふんわりと柔らかい仕上がりになるのと、編み込み模様を編むときは両手で編むのが今の自分には向いていると思ったからでした。
 フランス式とアメリカ式には編んだときの特徴がいくつかありますが、私にとって一番の大きな違いは何かと言えば、フランス式は編み地が緩め、アメリカ式は編み地が少々キツめという点です。普段アメリカ式で編んでいると、出来上がりの目がきつくなってしまうことが多々あり、どうやったら目が緩めのふんわりとした仕上がりになるのか悩んでいました。そんなとき、フランス式を練習していて、編み地が柔らかくて伸びもよく、こういうのが編みたかった!という仕上がりになることが多いことが分かったのです。
 編み込み模様は片手(フランス式)だけで編む方が、見た目もエレガントで憧れるのですが、これはいま練習中です。全然うまくできません。いつかできるようになればいいなあ。

 いまでは作るものによってこの二つを使い分けるようになりました。それでも圧倒的にアメリカ式で編むことが多いです。最近ではアメリカ式でも緩く編むことを意識しているので、キツくなることはだいぶ減ったと思います。それでもまだ、ゲージを取るときに指定の目数より大体2~3目多くなることが多いのが悩みです……。

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