イギリスの、サッカー放映に関する信じられないルール

 ブログには書いたことがありませんでしたが、私と夫は大のサッカー好きで、ヨーロッパに住むようになってから、試合がある日はテレビでよく観戦しています(ドイツでは何度かスタジアムでの観戦経験あり)。
 しかし、イギリスに来て知った、イギリス国内での、サッカー放映に関するちょっと信じられないルールがありました。

 それは、土曜日の14:45から17:15までは、イギリス全国で、いかなるサッカーの試合であろうと、テレビでの放映が禁止されているのです。

 ドイツでは毎週末のようにサッカーをテレビ観戦していたので、イギリスでも同じように週末はテレビ観戦!と意気込んでいたら、上記の時間帯はどこもテレビで中継がなく、愕然としました。
 なんでこんなことがあるのかと調べてみたら、『そんなことで?』とう理由だったのですが、イギリスは40年以上もこのルールを守っているのです。全世界でこんなルールを設けている国はイギリスだけです。

 今日は、このことについて書いてみようと思います。

イギリスのブラックアウト・ルール

 イギリスへ引越したあとも、引き続きドイツ・リーグのブンデスリーガを観戦するために、放映権を持っているBT Sportsを契約して、ドイツにいたときと変わらないサッカー観戦ライフを送る予定でした。

 しかし、イギリスには、先述したように『土曜日の14:45から17:15までは、テレビでサッカーを放送してはならない』という決まりがあったのです。イギリスでは、このサッカーの放送がない時間帯のことをBlackout ブラックアウトと呼んでいます。
 この時間帯はイギリス全土でサッカーのテレビ放送が禁止されているので、当然パブといった公共施設でも見ることができません(ラジオでは生中継OKらしいです。私は聴いたことはありませんが)。

なぜブラックアウト・ルールがあるのか

 なぜこういったブラックアウトを設けているのか、調べてみて、(一応)理由はわかりました。
 テレビ放映があることによって、スタジアムへ実際に足を運ぶ観客動員に悪影響があるから、とのこと。
 たとえば、リーグの強豪チーム同士の戦いがテレビ放映された場合、自分が応援する下部チームの試合を見にスタジアムへ足を運ぶことはせず、強豪チーム同士の試合をテレビ観戦する方を選んでしまうだろう。そうなると、下部チームは十分な収入を得ることができなくなってしまうかもしれない。
 こういった事態を回避しようと、あるチームの会長がこのことを呼びかけて作ったのが、ブラックアウト・ルールなのです。

 正直、そんな影響があるとは思えません。
 たとえどんなに大きな試合がテレビで放送されるとしても、自分の好きなチームの試合を見に、スタジアムへ足を運ぶ人の方が多いはずです。このルールを設けた理由を知ったとき、ファンたちをずいぶんと見くびってると思いました。
 おかげで、イギリスでは、この時間帯に行われている自国のプレミア・リーグの試合は観戦できないのに、イギリス以外では普通に放映されているという、なんともおかしな現象が起こっているのです。

ブラックアウト中に放送されるサッカー番組、試合にあらず

 ブラックアウトがあるせいで、この時間帯に、超シュールなサッカーの番組が放送されています。

 複数のサッカー解説者たちが、開催されているプレミアリーグの試合を、それぞれモニター画面を通して観戦し、試合の様子を興奮気味に実況する、というものです。
 この間、当然、私たち視聴者には試合の映像は一切表示されません。ただ、解説者たちが盛り上がっているのを見るだけです。

 これ、実際に放送を見ると、呆れるほどシュールです……。
 解説者たちが興奮している様子を見るだけの番組の、いったい何がおもしろいのか。ブラックアウト・ルールがあるがゆえに、こんな変な番組まで放送されているのかと思うと、いたたまれない気持ちになります。

ブラックアウト・ルールが変わる、2020-21シーズン

 しかし、このブラックアウト・ルールが、今シーズン2020-21では変更されることになりました。

 新型コロナウイルスの大流行にともない、現在、ほとんどのサッカーの試合はほぼ無観客で行われています(ドイツでは、少しだけですが、観客を入れはじめましたね)。
 イギリスも例に漏れず、観客がいないスタジアムで試合を行っていましたが、今シーズンは、無観客での試合開催が続く限りは、特例として、ブラックアウトを撤廃し、テレビでサッカーの試合を中継すると決まったのです。現段階では、まずは9月中の試合は、ブラックアウト時間中でも、放映されることが決まっています。いままでこんなこと、なかったそうですよ。

 撤廃する理由は、もし無観客試合でもブラックアウト・ルールを続けていたら、ファンが違法にストリーミングして観戦するのではないか、という懸念からなんだそうですが……こんな状況じゃなくても、そういう人はいると思うんですけどねえ。
 これを機会に、永久に撤廃されるといいのになあ。

 せっかく9月はブラックアウトがなくなるというのに、ブンデスリーガの試合が全部放映されるわけではないようなので、私たちにはあまり影響がなさそうなのが悲しい。

 ちなみに、一番上の写真は、2016年にドイツのサッカーチーム、ボルッシア・ドルトムント Borussia Dortmundの試合を、ホームスタジアムのジグナル・イデュナ・パーク Signal Iduna Parkで観戦したときのものです。ドルトムントのホームスタジアムのゴール裏は、Gelbe Mauer ゲルベマウアー(Yellow Wall 黄色い壁)と呼ばれています。

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