動かない方が得策なのは引越しでもそうだった話


 日本で働いていたころ、電車を使って通勤していました。電車は突発的なことで停まってしまうことも多く、あるときは天候の影響で、あるときは人身事故で、何度となくそういった場面に出くわしました。
 数々の電車停止の経験から、たとえ別の路線に乗り換えることが可能な場合であっても、『電車が停まったら、電車が動くまでその場を動かない』という経験則を持っています。ただ、打ち合わせなどで会社以外の場所で人と会う約束をしていたときなどは、もちろん目的地へなるべく早く到着できるよう動くこともありましたが、そんなことは滅多にありませんでした。会社へ通勤するだけ、または家に帰るだけ、という場合は、乗っている電車を降りることはほとんどありませんでした。電車が動き出すのを待った方が早く移動できることがほとんどだったからです。

 イギリスに来て、このことを思い出し、再びこれを経験することになろうとは思ってもみませんでした。電車のことではありません。引越しのことです。

 実は、近々引越しをすることになりました。イギリスのケンブリッジを離れ、ドイツのゲッティンゲンへ移動します。以下は、この引越しが決まってからいままでの顛末を書いてみました。長いです。

引越しが確定したものの、先行き不透明

 ゲッティンゲン行きは、今年の1月下旬に決まり、夫は行った先での仕事の開始日を4月1日にし、引越しを3月中旬と決めて準備を進めていました。しかし、私たちがこの計画を立てたとき、ドイツがイギリスからの入国を禁止していたことに、まったく気づいていませんでした。それに気がついたのは、2月中旬でした。

 ドイツは今年の1月13日よりイギリスをコロナの変異株が大流行している領域 area of variant of concernと指定しており、2月中旬の段階でもそうなっていました。そして、ドイツではarea of variant of concernからの入国を禁止する措置をとっていました(ドイツ国籍やドイツ永住権を持っている人は除く)。このことは、イギリスに住む私たちがドイツへ引越しすることができないことを意味していました。このことを知って大ショックを受けたのは言うまでもありません。
 このころは、ドイツは新規感染者数の7日間平均がここ2か月でもっとも少なく(それでも7千超え)、イギリスの7日間平均はまだまだ1万人を超えていました。この結果を見ても、ドイツがそう簡単にイギリスからの入国禁止措置を撤廃するとはまったく考えられませんでした。そのため、このとき夫は仕事の開始日を5月1日に変更した方がいいのでは、と新しい上司へ進言しました。しかし、先方からは「次の情報更新まで様子見をしよう」と言われました。前述の通り、次の更新で入国禁止措置の撤廃がされるとはまったく思っていませんでしたが、先方に同意し、それまで待機することになりました。

予定していた3月中旬の引越しは無理だと確定

 ドイツは、どこが変異株大流行領域 area of variant of concernか、高危険領域 high risk areaか、危険領域 risk areaかという情報を、ロベルト・コッホ研究所 Robert Koch Instituteが発表しています。これがだいたい2~3日から1週間ごとに更新されていました。

 3月上旬でも、イギリスはarea of variant of concernのままで、変更はありませんでした。このことで、私たちが最初に予定していた日程での引越しが無理だと確定してしまいました。そのため、相手が納得できるような情報をできる限り集め、再度夫が仕事の開始日をもうひと月遅らせた方がいいかもしれないと伝えました。ここでやっと、先方から「開始日はいつでも変更できるから」という言葉を引き出すことができ、ひとまず気持ちを落ち着けることができました。
 引越し屋さんには、3月中旬の引越しはキャンセル、入国ができるようになったら改めてまた依頼することを伝え、再び待機することになりました。このころの変化といえば、ドイツは2月中旬以降微増していた新規感染者数が急増し始め、イギリスは逆に、緩やかではあるものの日々順調に新規感染者数が減っていたことです。

最終手段の実行寸前、イギリスがただの危険領域に変更

 3月中旬になり、ドイツが更新した情報を見てもイギリスに対する警戒に変更がなかったため、2月下旬ごろから考えていた最終手段、イギリスから日本を経由してドイツへ入国する方法を本格的に実行に移そうと、各方面に連絡を取りいろいろと調整をし始めました。そして、日本を経由してドイツ入国を考えていると新しい上司へ伝えたら、また情報を更新されているから、もう一度改めて確認するようにとの返事がありました。このとき初めて私たちが情報確認をした翌日に、ドイツが情報を更新していたことに気づきました。内容を確認すると、イギリスがarea of variant of concernから、ただのrisk areaに変更されていたのです。high risk areaを飛び越して、まさかの二段階引き下げ。これには驚きを隠せませんでした。

 このとき、ドイツは新規感染者数が急増して1万人以上に達していましたが、イギリスは6千人を切っていました。それに加えて、イギリスはワクチン接種がかなりの勢いで進んでおり、このころには成人の50%以上が第一回目のワクチン接種を終えていました。おそらく、これらが考慮されて、イギリスがただの危険領域に引き下げられたのだと思います。下の写真は、実際にドイツのロベルト・コッホ研究所 Robert Koch Instituteが3月19日に発表した英語版PDFです。それによると、「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国(英国)はもはやarea of variant of concernではない」と書かれています(ピンクのマーカーのところ)。

 こんないろいろなことがあって、ようやく引越しができることになったのでした。長かった……(説明の文章も長い)。
 ドイツへ入国ができるようにはなったものの、入国後10日間の自主隔離期間が必要なので、それを終えて5月1日から働けるように、できるだけ早くドイツへ移動しようと思っています。現在は引越し屋さんに、最短でいつごろ荷物を運んでもらえるか問い合わせをしているところです。

電車が突発的に停まったときの経験則が、ここで活きることに

 もし、3月上旬の段階で、仕事の開始日が5月1日に変更されていたら、日本経由でドイツに入る計画をかなり早い段階で実行していたかもしれません。ただこれだと、イギリスから直接ドイツへ行くよりも何倍もの費用がかかることが分かっていたので、今後の生活を考えたとき、できれば実行したくないと思っていましたが……。

 結果的に、イギリスから動かずとどまったことによって、お金も時間もそうかからずにドイツへ入国することができそうです。これはまさに、電車が突発的な理由で停車した場合の経験則と同じで、『動かず待つ』、やはりこれが最強の選択なのだな、と思った出来事でした。
 
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