縮れた毛糸をまっすぐに伸ばす


 先日完成したノースリーブトップスのBamboo Shellを編んでいたとき、『いまはほかに手掛けているプロジェクトはない』と言いましたが、実は封印されていたプロジェクトがありました。もう二年くらい一切手を付けていなかったものです。それは毛糸で編むスカート『ブルガリアの手編みスカート Bulgarian Knitted Skirt』です。
 なぜこれに手を付けていなかったかというと、これを編み始めた当初は右手にかける糸を小指にひと巻きして編んでいたため、とても目がきつかったのです。そのため、かかっていた目が輪針のコードをスムーズに動かず、編むたびに力を入れて目を動かさなければならなかったため、それが煩わしくなって編むのをやめてしまいました。
 Bamboo Shellを編み終えたあと、次は何を作ろうか考えたとき、このスカートの存在を思い出しました。編んだものを引っ張り出してみたら、目がきついこと、きついこと。そのまま続きを編み始めたものの、いまはもう小指にひと巻きせずに編むようになったため、以前と比べると目がゆるく、編地を触った印象が全然違ってしまったのです。これはもうダメだと思い、一度すべてを解いて編み直すことを決心しました。

 前置きが長くなりました。

 一度編んだものを解くと、下の写真のように糸が縮れてちりちりです。

 まさかこのまま編むわけにはいきません。ちりちりのままだと糸が絡みやすくなるだけでなく、編んだ目がガタガタになりそう。だからといって、水通しをしてしまうと、糸はまっすぐになりますが、乾くまでに時間がかかります。そこで、湯のしをやってみることにしました。

ゆ-のし【湯熨=斗】
〔名〕〈スル〉湯気を当てて布のしわをのばすこと。(以下略)
 
引用元:デジタル大辞泉 第二版(小学館、2012)

 そもそも湯のしは、反物に蒸気をあててしわを伸ばすために使われていた技法です。これをほどいた毛糸でも使うになったのは、いつごろからなのでしょうか。ちゃんと調べていませんが、毛糸を湯のしするための専用の道具は、昭和中期ごろには巷に流通していたようです。現在私が把握しているのは、シルバー編機というメーカーが出していたアルミ製のものと、ブラザーが出していたアイロンの形をした陶器製のものの2種類です。欲しいとは思っていましたがもう現行商品ではないため、ただでさえ手に入れるのが難しいのに、海外にいるとさらに困難です(そういえば、日本以外で湯のしをするための器具って見たことないかも……)。
 先人たちが工夫をして身近な道具だけで湯のしをしていたのを見習って、私も手元にある道具を使ってできないものかと考えた結果、花のように開く蒸し器とお鍋を使う方法を思いつきました。

 用意したのは、蒸し器、それが入るお鍋、沸騰した湯、そしてちりちりの毛糸です。ちなみに毛糸はただほどいただけだと糸が非常に絡みやすく扱いづらいため、適当なものに巻き取っておくと作業がしやすかったです。私は先日購入した輪針を入れる箱に巻きつけました。

 お鍋に水を入れて火にかけ、沸騰させます。その間、蒸し器を逆さにして、無数に開いた穴に毛糸を予め通しておきます。逆さにした理由は、糸の位置が鍋底から高くなるので、その分お鍋に水をたくさん入れられるからです。

 蒸気が出てきたら火を弱め、毛糸を通した蒸し器を鍋に入れます。

 これで湯のしの準備ができました。
 基本的には、蒸気を当てればいいだけなので、常に強火で沸騰させている状態を続ける必要はありません。強火のままだと、お鍋のお湯があっという間に蒸発してしまいます。空焚きを防ぐためにも、沸騰したら蒸気が常に出るくらいの火加減(弱火~中火くらい)にしておくのがいいと思います。

 では、実際に湯のしをします。
 蒸し器を通る前の糸は、こんなにちりちりです。

 しかし、蒸気が立ち上る蒸し器の入ったお鍋を通ったら、こんなにまっすぐになります。すごい。

 このとき、糸はゆっくりと引っ張ります。速く引っ張りすぎると、湯のしがうまくできず、糸が十分にまっすぐになりません。そして湯のしをした糸は、次の作業がしやすいように丁寧に整えておくといいと思います。
 そして、湯のしが終わった二玉分の糸です。

 あとは玉巻き器で毛糸玉を作れば完成です。

 無事、すべての糸をほどいて湯のしをし、毛糸玉を作るところまでできました。

 そして、このブルガリアの手編みスカートを編み直すことにします。編み方自体は単純なのですが、ウエストの処理など、たしか編んだ方々によるコメントそれぞれに注意事項が書かれていた記憶があります。いろいろと忘れてしまっているので、まずはそのコメントにもう一度目を通すところから始めようと思います。そして今度こそ完成させるぞー!
 
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2件のコメント

  • 次はボトムですね。一回michiyoさんの本で見たのと野呂さんの毛糸の段染めで編むスカートをみたことがありますが、フレアで素敵ですね。
    それにしても湯のしがこんなに効果的だとは。うちにもこの蒸し器ありますよ。もし伸ばすときは真似してみます。

    • マカロンさん、コメントありがとうございます。
      このスカート、今度こそは完成させようと意気込んでいます。トップスはどんな感じになるのか想像が容易いですが、ボトムとなると……どうなるのかが分かりません。でも、どのボトムも、写真で拝見するととっても素敵ですよね~。そうなるようにがんばります。
      湯のしはとっても効果的で、いろんな方の湯のしの様子をブログなどで拝見していましたが、初めてやったときは「こんなに簡単にまっすぐな糸になるのか!」と本当に驚きました。機会がありましたら、ぜひお試しを!

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