UEFAチャンピオンズリーグの偽入場チケット被害にあった話

スタジアムで渡された紙(一番右)と、偽の入場チケット(左の3枚)

 
 先日2022年5月28日に、UEFAチャンピオンズリーグの決勝戦、イギリスのリバプール Liverpoolとスペインのレアル・マドリッド Real Madridの二チームによる対決がパリのスタッド・ドゥ・フランスにて開かれ、0-1でレアルが優勝をして幕が下りました。我が家ももちろんテレビ観戦をしていたのですが、ドイツ時間21時に開始予定だったのが、30分以上も遅れて試合が始まりました。最初は遅延の理由がわからなかったのですが、あとで『偽チケット』を持ったリバプールファンたちが多数いて、正規チケットを持った人たちを入場させるための整理に手間取ったため、という説明がありました。

 実は以前、私たち夫婦もこの偽チケットを掴まされたことがありました。今回の決勝での出来事でまっさきに思い出したのは、もちろんそのことでした。これはブログを始める以前に経験したことだったので、まだ記事にしたことはなかったのですが、こういった事件が起こったことを踏まえ、自分たちに降りかかった出来事を書いておこうと思います。

試合を見に行くことになったきっかけ

 イギリス在住当時、単身でやってきていたサッカー好きの方と仲良くなり、私たち夫婦と3人で、サッカー観戦にスタジアムへ行こうという話しになりました。ちょうどこのとき、UEFAチャンピオンズリーグ2018-2019でドイツのボルッシア・ドルトムント Borussia Dortmundがグループリーグを一位抜けし、ラウンド16でイギリスのトッテナム・ホットスパー Tottenham Hotspurとの試合がロンドンで開催されることになっていました。初のチャンピオンズリーグ観戦といこうじゃないか!と盛り上がり、2019年2月13日イギリス時間20:00キックオフの、トッテナム対ドルトムントの試合のチケットを夫が購入し、その日を楽しみにしていました。試合会場はロンドンのウェンブリー・スタジアム Wembley Stadium。本来ならばトッテナムのホームスタジアムのトッテナム・ホットスパー・スタジアム Tottenham Hotspur Stadiumで試合が行われるはずが、当時はまだ完成に至っておらず、一時的にウェンブリーをホームスタジアムとしていたためです。

試合当日、スタジアムへ入場できず

 当時住んでいたケンブリッジから、ロンドンのリバプール・ストリート駅に到着し、電車を乗り換えてスタジアムに向かうと、どんどんドルトムントファンたち(チームグッズを身に着けているから分かりやすい)が乗ってきて、電車の中が大混雑してきました。試合前の高揚感でドルトムントサポたちが車内でビールを飲んだり、歌を歌ったりするのは、ドイツでは試合前などによく見た風景だったので懐かしく、微笑ましく見ていましたが、これにイギリスのご婦人方は盛大に眉をひそめていました。まあ、分かるけれども。そもそもイギリスでは、電車内での飲酒は禁じられていますしね。

 そんなこんながあってスタジアム最寄りの駅に到着。初めてのチャンピオンズリーグ生観戦に興奮を抑えられずにスタジアムへと向かい、入場ゲートへの列に並びました。ウェンブリーはスタジアム入り口に自動改札機が設置されていて、チケットに書かれているバーコードを読み込ませたら扉が開き、中へ入れるシステムでした。自分たちの番になり、いざバーコードを読み込ませてみたら、何とエラーが出てしまい、扉が開かなかったのです。私だけでなく、夫も友人も、3人とも。後ろにはどんどん入場を待つ人たちが長蛇の列を作っていたので、慌てて列を外れ、どうしたものかと話していました。そのときたまたま近くにスタッフの人がいたので事情を話すと、スタジアムの外にある窓口へ行くように言われました。

購入したチケットが偽チケットだったと知る

 窓口では、何人かが軽くスタッフと揉めていました。一体何事かと思いつつも、窓口で入場できなかったむねを話すと、チケットをどこで購入したのか質問されたので、購入した夫が答えると、手慣れた雰囲気で一枚の紙を渡してきました。そこで衝撃的なことを言われたのです。「そのサイトで購入した、あなた方が持っているチケットでは、この試合、入場することができないんです」と。続けて「詳しくは、いま渡した書類に書かれているので、銀行で返金手続きをしてもらってください」とも言われました。最初は何が起こったのか分かりませんでしたが、ようやく理解できたのは、自分たちが持っているのは偽チケットだったということ。夫は当日行けなくなった人たちなどによってチケットが出される売買サイトで購入していました。まさかこれが偽チケットだったとは……。窓口で揉めていた人たちは、みんな同じ被害に遭っていたようで、それでもなんとか中に入れないかと交渉していたようでした。

 結局、当然ですが、スタジアムには入ることは叶わず、目の前のスタジアム内からは大盛りあがりのファンたちの声援が聞こえるのを背にして、スタジアムからすごすごと立ち去るしかありませんでした。その後、リバプール・ストリート駅近くにある、よく行っていたお気に入りのドイツ居酒屋(Bierschenke)へ移動し、そこでビールを飲みながら大画面に映し出された、本当ならスタジアムで観戦していたはずの試合を見ました。このときの試合は、ドルトムントが0-3で敗戦してしまい、目前でスタジアムに入れなかったこともあって、3人ともお通夜状態でケンブリッジへと帰りました。

返金手続き

 このチケット購入で、私たちは詐欺に遭いました。はっきりとした金額は覚えていませんが、3人分で£200以上かかっているので、決して安いとは言えない被害額です。スタジアムの窓口や渡された紙で案内があったように、試合があった日の翌日、夫は銀行へ返金手続きを申し込みに行きました。窓口の方はとても親身になって手続きをしてくれたそうで、「このこと(サッカーの偽入場チケット被害)は、残念ながら本当によくあるんです……」と言っていたのだとか。その言葉からも、かなり被害が多いのだろうと想像できます。
 この返金手続きのほかに私たちにできることはなく、「あとはわれわれ銀行と偽チケット販売業者とのやり取りになるので、返金を待っていればいい」と言われ、手続きは終了。その翌日には、銀行から夫の口座に被害金額が振り込まれていました。その後、銀行と業者がどうなったのかは分かりません。

非公式なチケット売買サイトについて

 私たち夫婦も、今回一緒に言った友人も、それぞれ別の機会に、チケット売買サイトでサッカーのチケットを購入し、試合を見に行った経験があります。なので、まさかこんな詐欺に遭うとは思いもよりませんでした。そして、今回UEFAチャンピオンズリーグ2021-2022の決勝で、偽チケットで入場できなかったのはリバプール側だと言うではありませんか。つまり、イギリスでチケットを購入して、イギリスからやって来ていた人たち、ということです(おそらく)。そこで、私たち夫婦が出した結論は、『チャンピオンズリーグの試合のチケットは、イギリスの非公式なサイトで購入したら、偽チケットを掴まされる可能性が非常に高い』ということでした。どういうことかというと、私たち夫婦は以前ドイツに住んでいたときに、何度か国内リーグ戦(ブンデスリーガ)の試合観戦をしていますが、チケット売買サイトで買って問題なく入場することができました。友人はイギリスで何度か国内リーグ戦(プレミアリーグ)の試合を観戦していますが、彼もチケット売買サイトで購入しており、問題なく入場できたのだそうです。そのため、一概にチケット売買サイトがダメなわけではなく、ただ、チャンピオンズリーグの観戦チケットだけは要注意なのだろうと思ったのです。

やはり公式ルートで購入するのが一番。それは分かっているけど……

 ウェンブリーの窓口で受け取った紙には、『(トッテナムは)プレミアリーグおよび警察と協力して、こういった詐欺を行っている非公式チケット販売会社に対して可能な限りの措置を講じていて、ファンがその犠牲にならないよう努めている』と書かれていました。また、銀行の返金手続きをしてくれた職員さんの言葉からも分かるように、イギリスではこのような偽チケット売買がかなり横行しているのでしょうね。試合観戦チケットは、チームの販売する公式ルートで購入するのが一番なのは分かっているのですが、そういうのはすぐに売れて販売が終了していることがほとんどなので、手に入らなければ非正規ルートを使う人が多いのも仕方ないのかもしれません。そこに付け込んだのが偽チケット販売なんでしょう。今回のチャンピオンズリーグ決勝で入れなかった大勢のリバプールファンたちの無念な気持ちは、とてもよく理解できます(だからといって、無理やり中へ入ろうとするのはやっちゃいけませんが。そしてそれを阻止するのに催涙ガスを散布って……フランス警察よ……)。
 
 会場へ行って入れないことが分かると、こんなにショックなことはありません。しかも今年の決勝ではニュースで盛んに報道されるような事件へと発展してしまいましたし。私たちは、2019年に詐欺に遭って以来、サッカー観戦にスタジアムへ行こうかという話しが、なんとなく出なくなってしまいました。
 
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