佐納特許品製作所のサンヱス湯伸器 ~叔母から譲り受けたもの 4


 2023年11月上旬~中旬に一時帰国をしたさい、編み物の先生をしていた叔母からいろんなものを譲り受け、その一部をドイツに持ってきました。毛糸は下記記事で紹介しています。

 そのほかに、編み物の道具を三つ持ってきています。今回はそのうちの一つ、サンヱス湯伸器(以下、表記を『サンエス湯伸器』とします)を紹介します。

 これは、叔母の話しによると、叔母の母(つまり、私にとっての祖母)が昔よく使っていたものらしいです。箱を開けてみると、陶器製の湯伸器と説明書が入っていました。

小さい穴の上に縮れた毛糸を渡して金具の蓋をします。この小さな穴から出てくる蒸気で湯のしをします

 
 使い方は、箱の表に描かれている絵のように、やかんの口にサンエス湯伸器をつけて、やかんの中で沸騰しているお湯から出る蒸気で糸を伸ばすようです。説明書の手書き文字が美しい。

 箱の表や説明書に、昭和25(1950)年に特許を取得したことを堂々と書いているあたり、佐納特許品製作所の誇りが目に見えるようです。実際に特許庁のデータベース『特許情報プラットフォーム J-PlatPat』で調べてみたら、この湯伸器の登録実用新案公報2ページ分(ただし、公報では『毛糸癖直器』になってた)が出てきて、ちょっと感動しました。

 叔母から簡単に使い方を聞いていたのですが、改めて説明書を見てみたら、そこには特許のことと、この商品の特長、そして使用説明が書かれていました。そのなかから、使い方について書き出してみました。現代とは表記が違うものもありますが、すべて説明書にあるままです。なお[ ]は私が書き加えたよみがな、または言葉の意味です。

(前略)
丈夫でスベリの良い
硬質製陶器 毛糸湯伸器[けいとゆのばしき]
(中略)
使用説明
水は箱のレッテル[レッテル:商標]の圖面[ずめん]の如く茶瓶の半分位入れ茶瓶の口にきれを巻き付け 本器を取り付け湯氣の洩れない様にして下さい
毛糸のクリーニングは本器の蓋に毛糸を入れ蓋をして御使用下さい
湯伸しの場合は蓋をあけ御使用ください うすのりのしたい時は茶瓶の中に少し「ゴハン」を入れ御使用に成ればうすのりが出来ます
御使いに成る茶瓶は成るべく大形を用い常に茶瓶は口を上にはすかい[はすかい:斜め]にすれば 水が澤山[たくさん]入り沸騰が強力です
(後略)

 湯気が洩れないように、やかん(茶瓶)の口に布切れを巻きつけてから湯伸器をセットして使う、ということか。なるほど、やかんの口に布を巻いてから取り付けるというのは、これを使うにあたって重要なポイントですね。
 実際に使ってみたいのですが、残念ながらいま我が家にはやかんがないのです(以前は持っていたのですが、蓋が壊れていたこともあって、ゲッティンゲンへ引越ししたさいに処分してしまった)。電気ケトルでも使えるか……?と思ってセットしようとしたら、湯伸器が思っていたよりも大きくて、そのそも電気ケトルの口に入りませんでした。湯伸器の経口を測ってみたら、内側は2,3 cmくらいで、外側は3,1 cmもありました。そりゃ入らないわ。

 電気ケトルがあるので、やかんがなくても不便を感じたことは一度もないのですが、いまのままではサンエス湯伸器が使えないじゃないか! せっかく湯のしをするのに簡単に使える道具が手に入ったというのに、なんてもったいない。絶対持ち腐れにはしたくないので、そのうちやかんを買おう。湯伸器を試しに使ってみることができるようになるのは、もうちょっと先になりそうです。
 
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