プロテスタントの教会でバッハのカンタータを聴く


 昨日の夕方、家から徒歩5分くらいのところにあるプロテスタント教会St. Jacobi 聖ヤコビで、バッハのカンタータを10月28日、30日、31日と三日間演奏する7. Bach-Tageに行ってきました。昨年は気づいていませんでしたが、毎年このくらいの時期にバッハのカンタータを演奏するBach-Tageが開かれているようで、今回で7回目なのだそうです。
 カンタータというのは、器楽演奏付きの単声または多声の声楽作品のことで、ドイツでは教会で演奏される宗教音楽(教会カンタータ)として17世紀ごろから盛んに作曲されていました。とくに、作品数が多いテレマンやバッハなどの作品がよく知られていると思います。

 昨日の2022年10月28日に演奏されたのは、BWV 26 “Ach wie nichtig, ach wie flüchtig”《ああ いかにはかなき、ああ いかにむなしき》と、BWV 60 “O Ewichkeit, du Donnerwort”《おお永遠よ、汝恐ろしき言葉》の2曲のカンタータです。
 キリスト教には独特の暦があり(教会暦。リンク先:Wikipedia)、三位一体の主日(復活の主日から40日後に主の昇天、その10日後が聖霊降臨の主日、さらにその一週間後の日曜日のこと)から、毎週日曜日を『三位一体後第◎日曜日』と数えるらしいのですが、昨日演奏された2曲は、どちらも三位一体後第24日曜日に演奏されるために作曲されたカンタータ作品のようです。

 古楽器が奏でる柔らかい音色が教会の中でさまざまに反響し、音が降ってくるような、そんな感じを体験して、なんとも贅沢なコンサートでした。
 とくに良かったのはBWV 60。この曲は、『怖れ Furcht(アルト)』と『希望 Hoffnung(テノール)』が対話をしていくダイアログ・カンタータと呼ばれていて、途中登場する別の声(バス)に、ちょっとした演出がありました。
 第4曲はアルトのレチタティーヴォとバスのアリオーソで対話(というか物語?)が進んでいき、『怖れ』が死ぬことへの恐怖を口にすると、バスは「死者は祝福される」と答えるのですが、このバスというのが神の声だった、と分かる内容です。今回の舞台では、バスは講壇(下記写真左側にある、一段高いところ。普段は教職者がここに立ち、説教をするのに使っています)に立って歌ったため、地面に立って歌っているアルトとは異なる、教会内を包み込むような柔らかな音の響きとなり、まさに「天の声」のような雰囲気でした(教職者たちが講壇に立って説教するのも、その効果を狙っているので、バスの声の響きにも納得)。内容に即した、とても効果的な演出だと感嘆。もしかして、楽譜にそんな風に演出しろって書かれていたりするのかと思って見てみたら、ただ“Die Stimme des heiligen Geistes(聖霊の声)”とあるだけでした。肩透かし。

写真左下にある舞台よりも一段高いところが講壇で、BWV60第4曲ではバスの歌手がここに立って“Selig sind die Toten(死者は祝福される)”と歌っていました。その響きはまさに天の声

 途中、牧師さんによるスピーチ、主の祈りと祝福もありつつ、約40分と短いコンサートでしたが、久しぶりにクラシックの生演奏をゆったりとした気分で聴くことができて幸せでした。教会内は暖房設備などがないため、真冬はコートを着たままでいることが多いのですが、昨日は例年にないほど暖かかったので(日中は20℃を越えていて、夕方も15℃くらいあった)、寒さを気にすることなく音楽を堪能できたのは本当に幸いでした。

 ちなみに、このコンサートは入場無料ですが、終了後に出口で幾ばくかのお金を寄付するだけでした。ドイツの教会でのコンサートで、何度かこういった『寄付金』という形でお金を払うのを経験しているのですが、ほかの国の教会でもそんな感じなんでしょうか。
 
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